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10月歌舞伎座は、 勘三郎の七回忌追善公演 。亡くなってもう7年も経つのかと言う感慨と、でも、 あの時のショック、悲しさは、消えることないという気持ちが、同時に湧き上がります。遺影となる写真を見ると、まだ胸がうずきます。
でも、夜の部の演目には 、狂喜乱舞しました!助六を仁左衛門が演じるという(助六曲輪初花桜)。助六は、海老蔵がやるようになって、もう他の役者はできないだろうと思っていました。ところが、七之助の揚巻の初役に合わせたのでしょう。本当に、本当に、嬉しいことです。玉三郎も、助六の母満江役で花を添える。
十月歌舞伎座感想 仁左衛門の助六が美しすぎる
今回が、歌舞伎座では最後の助六ではと思い、何回か観るので、まずは2日に観劇。3階の東の席なので、花道がしっかり観えます。ここが観えないと、助六の出の大切なところ15分くらいが待ちぼうけですから。
7月の松竹座公演では、さすがに、頬のあたりにおやつれを感じ、年齢を考えれば仕方ないことだと思いましたが、ちょっと寂しい。だから、助六の登場までは、期待と心配で、ドキドキします。
揚巻主演の場が終わり、いよいよ助六の登場です。花道の揚幕があく「シャッ」という音とともに、下駄の音がカッカッとして、仁左衛門の助六が登場です。大きな拍手と、大向こうからの「松嶋屋!」の声で、盛り上がります。
傘で顔を隠し、腰をかがめた格好から、傘を開き、パッと顔を上げます。3階からのオペラグラスだったので、よーーーっく見えました。思わず「キャッー!!」と心の中で叫びました。
あまりにも美しいのです!!歌舞伎の化粧というのは、本当によくできているというか、目じりと眉尻をつないだ、赤い隈取が、鼻筋の通った美しい人を、さらに美しく見せる。感動しました!!
花道の出では型をきちっと決めようとして、丁寧に慎重に演じている感じがしました。下駄で結構足を広げてたりしますから。
本舞台に上がってからはゆとりです。まだ2日目ですが、余裕を感じます。キセルがじゃんじゃん集まるところなんて、「当然でしょうー」って感じだし。ビジュアルの美しさも十分でふが、やはり、セリフが心地いい。
意休は歌六です。ガタイの迫力はちょっと落ちますが、いい声で聞きやすい。ちょっと知的な感じでしょうか?仁左衛門と歌六なので、耳に優しい。
十月歌舞伎座感想 地味にした玉三郎がきれい
途中の登場人物もそれぞれすばらしいのですが、やはり、なんといっても玉三郎です。細かい柄の地味な小紋に黒の羽織で、編笠で顔を隠して登場。
観客からは、大きな拍手です。華やかな七之助の揚巻と一緒なのですが、また美しいのです。
黒の羽織が肩にふわりと馴染んでいて、なんだか着たくなります。眉のない、老け女形の化粧顔に、ある意味、幻想的とでも言えるような美しさがあり、ふんわりとした空気に包まれています。
二部では、「吉野山」の静御前を踊り、とてもかわいらしかった。最後に、紫色の風呂敷に包んだ荷物を背中に斜めにしょい、前で風呂敷を結ぶときの、手の仕草のたおやかさといったら。「ちょっとしたしぐさでも全然違う」と、ため息をついていたばかりでしたので、余計にこの地味な美しさへの感動が、大きくなります。
玉三郎が、助六の仁左衛門と、兄役の勘九郎の母親役なのですから、楽しいです。本当に、ごちそうな役でしたが、やっぱり、玉三郎の揚巻もみたかったなと。
「たとえて言えば雪と墨」「間夫がなくては女郎は闇」とか、暗がりでも、絶対間違えないもんね、と言って高笑いする悪態を、聞きたかったなー。もう、やらないのかな?
十二月公演の「阿古屋」も、梅枝と児太郎との役替わりにしてるし。若手を育てようという姿勢は、本当に素晴らしいと思うけれども、仁左衛門の助六が、こんなに美しく、心地よいものだと知ると、玉三郎の揚巻をまた観たいと思う。
十月歌舞伎座感想 彌十郎の花道の言葉でジーン
勘三郎がサヨナラ歌舞伎座公演でやった通人を、彌十郎が演じます。股くぐりということがわかっているので、登場しただけでおかしい。勘三郎のやったような流れで、演じますが、違うのは、大きさ。そのおかしさに加え、愛嬌があり、劇場が湧きます。
帰りの花道では、勘三郎さんに話しかけます。観客である私も、まだ悲しいのだから、彌十郎さんの言葉には、ウルッときました。
楽しい、充実した観劇となりました。幕見は、ほぼ座っているようでした。観たい方は、早めに幕見だけでも観ることをオススメします。