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十一月顔見世歌舞伎夜の部を千秋楽観劇。今月は梅丸が梅玉の養子、莟玉になったお披露目なので、絶対観たくてチケットを取っていましたが、急遽都合が悪くなり、今日に。
4時前に行ったら、幕見は一幕、二幕共にすでに立ち見になっていました。
私もチケットが取れなかったら、一幕、二幕の幕見だけをしようと思っていました。
ところが!!
思いもよらず、三幕目の「市松小僧の女」がとてもよかったのです。今まで見たことない演目で、笑いと愛情にあふれる物語。この物語をもっと知りたくて、また、記録として残したくて、いつもは買わない筋書きを買いました。
一幕目 「菊畑」梅丸から莟玉へ
菊の花が咲き誇り、背景は、秋。舞台はきれいだし、時代狂言の格式があります。「莟玉」を名乗ることになった梅丸を、系列の役者が集まっての演目で、とても暖かく、なんといっても莟玉が、キラキラしています。
梅玉演じる奴智恵内が、梅丸の虎蔵(実は牛若丸)を打てと言われて、主君である牛若丸を打てずに躊躇するところに、梅丸を心から見守る梅玉の親心が滲み出て、とてもよかったです。
虎蔵に恋する鶴姫が魁春。赤姫ですね。3階席だったのでかわいらしかったですが、オペラグラスで見ると、それは、ちょっと驚きましたが・・。
若さあふれる莟玉との年の差赤姫。恋するお姫様に見えますから。これが歌舞伎の味ですね。ツルツルしたお肌ばかりが、いいのではありません。
芝翫は老け役の鬼一法眼をやっており、老け化粧に白髪が良く似合ってます。赤い杖をついて立っているのですが、背が高いから、堂々として敵役らしいニクニクしさが出ます。
この芝翫の姿を見慣れた所に、鴈治郎の湛海が花道に登場。ロン毛でセンター分けして頭頂を高くして、偉そうな態度ですが、「ん?これは大人?子供?」と、一瞬迷う。腰元に小学生ぐらいの子役がでているので、サイズがそちらに近いように見えたのですね。芝翫とのサイズ差があるから仕方ない。でも、セリフを言えば問題ないのです。
そこで、芝居を一旦中止して、莟玉のお披露目口上となります。鴈治郎は、息子の壱太郎と同世代の梅丸を「小さい頃から、玉ちゃん、玉ちゃんと呼んでいた」と。暖かいまなざしを感じるいい口上でした。
莟玉の牛若丸は、美しく品よく、キリリとしてとてもよかったです。梅玉の芸を引き継ぐことになるのでしょうが、女形を是非続けて欲しいです。誰が見ても、「キレイ」と思える女形姿は、宝ですから。
二幕目 「連獅子」幸四郎、染五郎親子
これには幕見席に、立ち見がズラリと入っていました。歌舞伎らしい人気演目なのと、やはり、親子はいいですよね。
連獅子って「こんなに親獅子ばかり踊ってたっけ?」と思ったり、子獅子が谷から上がってくる演出もあっさりだったなとか、毛振りは、ずっと正面向いて振りっぱなしとか、よく観る「連獅子」よりシンプルな構成のように思えました。が、染五郎はまだ少年。丁寧に、できることからやっていけるようにしているのでしょう。飛び上がる高さは驚くほどあるし、回転するところはキリッと決まっていました。
最後の気振りは、子獅子は花道からスタートし、正面舞台に移動し、最後は親子で、台にのって正面に向いてグルグル回します。染五郎は、華奢なので、パワーがまだ足りないのでしょう。なんだか毛先がフニャリとしたりします。
一度もフォーメーションを変えずに気振りが続く。観客の拍手も続く。だんだん振りが大きくなり、観客の拍手も大きくなる。そして、最後、毛振りが終わったところで、拍手がグーンと大きくなっていきます。「連獅子」だからこその、感動を味わいました。
三幕目 「市松小僧の女」時蔵と鴈治郎のカップルがいとしい
歌舞伎座に向かうエスカレーターを上がったところに、芝居の看板が出ていますが、この画像を観た時には、「へんなの」という感じでした。友人から「男勝りの役でおもしろかったよ」とは聞いていましたが。
剣術道場に通い、男勝りで行き遅れの長女お千代(24才)の婿探しから、物語は始まります。お千代の父親から「婿養子になってくれ」と頼まれる親戚の三男坊との会話が面白くて、声を出して笑うことも度々。上質な吉本新喜劇のようです。
時蔵のお千代は、肌を茶色っぽい色に塗り、上半身に厚みを出し、袴をはいている。まさに女剣士姿です。もともとガタイのいい人だから、カッコいい動きも、男をビシッとこらしめるのも似合ってます。これが痛快で笑えるのですね。
剣術道場の先輩が芝翫。奉行でもあります。これがいい役で。芝翫でこんなにいいと、思ったことないと、いうぐらい。カッコも似合ってる。本当にいい人なんです。
大店の娘でもある時蔵が恋に落ちるのが、5つも年下でスリの子分だった鴈治郎の又吉。このデカイ女と小柄な男の組合せが、おかしくもあり、ほほえましくもあり。
千代にスリを見破られた又吉は、千代に切りかかりますが、あっさりとねじ伏せられます。そして、千代が又吉の顔を殴ろうとした時に、「アラッ、かわいい顔しているね」と。今度はくすぐり始めます。これが、子犬をかわいがるようで楽しくなります。鴈治郎には、小柄だらかこそ出せる愛嬌があって、微笑ましいのです。
二人は恋に落ち、「おかぁちゃんみたいや」と、又吉が千代に甘えるところなんか、ホントに微笑ましい。一見普通ではないこのカップルですが、その幸せな気持ちが、こちらにスーッと入ってくるのです。
また、娘を思うお父さんや、お嬢さんの幸せを願う番頭さんや乳母、とりまくまわりの人がいいのです。もっと早くから観ておけば、これを幕見でリピートしたかった。
なんでこんなに、胸にくるのかと思えば、池波正太郎の作品なのでした。先の一幕、二幕に気をとられて、気にしていませんでした。この作品は、42年前に、梅幸と二世又五郎のために書き下ろされ、正太郎自身が、演出もしたそうです。確かに、梅幸なら押し出しが良かったから、千代にぴったりだなと。
二人は所帯を持ち、商いも繁盛しています。ここで、千代は、美しい時蔵本来の若奥様姿になっています。「男に生まれたかったのに」という女が、恋によってここまで変わる。この落差が見せ所です。
幸せな展開できていたら、魚屋がやってきて、「包丁を研いでおいたよ」といって届け、それを部屋に置く時蔵。「こんなに楽しませてくれておいて、最後に包丁で殺し、とかないよね?」と、ちょっと不安がよぎります。
そうしたら、やはり不幸が。芝翫の奉行がやってきて、又吉がスリのクセがやめられておらず、「今日、二回目を目撃した。もう見逃せない。」と。「アレは病気だ」と苦し気に言う芝翫。泣き崩れる千代。
そこに、外回りをしていた又吉が、元気に朗らかに帰ってきます。この天真爛漫さも鴈治郎のいい所。そして、スリがばれていると知り、「金が欲しかったんじゃない!!」「手が勝手に」と泣き崩れる又吉。
心配していた通り、千代が包丁をつかみ、又吉を押さえつけます。ここからどうなることかとハラハラします。
でも、最後は胸キュンな展開になり、お互いの愛情を確かめ合い、しっかりと抱き合う二人。最後の又吉のセリフも胸キュンでした。
大阪の松竹座で、時蔵、鴈治郎で再演してほしい!!強く、強く願います。本当にいい作品だし、この二人にピッタリでした。正太郎の小説が読みたくなりました。
まとめ
今日は、一幕はお披露目、二幕は親子、三幕はこの作品で、すべて胸を暖くしてくれました。
やはり、知らない作品は中日ころまでには観なくてはだめですね。