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12月の歌舞伎座公演は、昼も夜も玉三郎の指導のもと、若手が初役に挑戦するのが話題です。それも、玉三郎が得意としてきた、人気の演目ばかり。
昼の部は、上方歌舞伎の中村壱太郎(28)が、「お染久松」のお染の七役を勤めます。
壱太郎を玉三郎が指導 今年のお正月公演から始まる
昨年の10月に、長唄の名曲である「秋の色草」の舞踊で、玉三郎と梅枝、児太郎が共演しました。この曲には、途中「琴の相方」という、三味線とお琴で演奏する華やかな部分があります。ここで若手二人が琴の生演奏をしたのです。これは、将来の「阿古屋」に備えてのことだろう、さすが玉三郎、と思いました。
そうしたら、今年のお正月公演が、玉三郎と壱太郎の舞踊公演に。玉三郎は昔からずっとファンですが、壱太郎は、踊りの確かさと、柔らかい女形らしさ、かわいらしさですっかりファンになっています。だから、とても嬉しい。
この時も「秋の色草」を共演しました。壱太郎は一人でお琴を弾くのかと思っていましたが、玉三郎も舞台に残り、二人での演奏となりました。
その時に驚いたのが、玉三郎のお琴を弾く姿勢です。
お琴というのは、少しうつむいて弾くものだと思っていましたが、玉三郎は、スッと背筋を伸ばしたまま、まぶたを伏せて、軽やかに指を使い、琴の上を、滑らかに腕を滑らせます。
弾いてる姿が、本当に美しいのです。10月に観た梅枝、児太郎とは、全然印象が違いました。
壱太郎は、必死で琴をみつめ、まちがわないように、琴の端っこを、1本の指ではじいているような感じでした。弾くことを見せる、というまでにはとても到達していません。
まさに、先生と生徒。当たり前ですが、「阿古屋」を上演できる玉三郎は、演奏技術から、こんなにも違うのか、と気づかされました。
壱太郎は、この時、自分一人の演目として「鷺娘」を踊りました。これこそが、玉三郎が世界でも認められた、代名詞のような演目です。壱太郎は、柔らかい空気をまとい、まぁるい感じのかわいらしさがあります。玉三郎は、スラリとしていて、まさに鷺のような美しさ。
壱太郎は踊れるので、きちんとできていましたが、やはり、玉三郎で刷り込まれている「鷺娘」からは程遠く、この作品のもつ、「踊り」だけではない魅力には、遠かったかなと。
でも、この時も、玉三郎が色々と教えてもらったようで、嬉しいことでした。
さらに、壱太郎は3月に歌舞伎座で、「滝の白糸」の主演を勤めます。これも、玉三郎の芸を引き継ぐこと。でもこの物語は、今の時代感覚とはズレているし、大人っぽい美女じゃないと、ただ哀れになってしまって、難しいなと思いました。
玉三郎と壱太郎では、キャラがあまりにも違うので。選ばれたのは嬉しいけれど、ちょっと残念でした。
十二月歌舞伎座 昼の部「お染の七役」感想
何年か前、猿之助がこの役をやった時、芸者や毒婦のお六はよかったのですが、主演となるお染に、お金持ちのお嬢様らしい美しさが感じられなくて、ちょっとがっくりでした。この役は、玉三郎のように、まず、「誰が見ても日本的な美しさを備えている」、という前提があり、その人が変わるから面白いんだなと。
壱太郎は、玉三郎のように、スッとした美形ではありません。「滝の白糸」のこともあるし、だから、このお染がちょっと心配だったのです。庶民的だったらどうしようと。
でも、大丈夫でした!黒地に、中柄の花模様の振袖を着て、かわいさと華やかさを併せ持つかんざしをして登場してきた時は、まさに、ウブなお金持ちのお嬢さまでした。よかったー!
田舎娘であるお光は、思った通りぴったりです。まぁるい菊のような大きな銀色のかんざしを右側(たぶん)にさしていて、それがとっても良く似合う。お染とは違う、シンプルな着物なので、本来持つかわいらしさにピッタリ。
久松は、後ろ姿は女形のままで、なよっとしすぎ(-_-;)。スラリとしていないので、スキッとした二枚目とまではいきませんが、まぁ合格です。芸者小糸は、はんなり色っぽく、奥女中竹川はキリッとし、後家貞昌の老け役も、なかなかなもので、早変わりもスムーズだし、役作りもできていました。
ただ、土手のお六だけは・・・ダメでした。毒婦ですから。壱太郎もこういった役は初めてということですし、持ち味になさすぎる!!最近、玉三郎で観たばかりだし、とても同じ衣装とは思えない。さらに、この役だけが、芝居として長い。イキに着ているはずの着物が、だらしなく胸元がはだけているように見える。
まぁ、でも、これは仕方ないでしょう。それよりも、お染がきれいで、お光がかわいく、他の役も演じわけて、早変わりが楽しめました。今は、それで十分です。
舞台の最後には、お光の踊りとお六の踊りがつきます。そして、お六姿で、「昼の部は、本日はこれぎり」の舞台挨拶を壱太郎がしました!!感激しました!!!
後半で、もう一度観たいと思います。お六は成長しているでしょうか?ガンバレ、壱ちゃん!!若手の抜擢には、こういう楽しみがありますね。