松竹座「七月大歌舞伎」昼の部感想 襲名披露公演 メリハリある演目

七月の大阪松竹座は、毎年「関西・歌舞伎を愛する会」ということで、上方歌舞伎の名家、松嶋屋が出演することに加え、最近は、同じ上方歌舞伎の坂田藤十郎の孫、中村壱太郎が良い役で出演するので、楽しみがプラスに。

今回は松本白鵬、幸四郎の襲名公演で、昼の部は、幸四郎の襲名演目の「勧進帳」で、仁左衛門が当たり役の富樫を勤める。また、幕開けは、「廓三番叟」と、観た事ないけど、キレイ系の踊りに壱太郎が出演。夜には口上もあり、猿之助も出演する。充実した内容です。

松竹座「七月大歌舞伎」昼の部「廓三番叟」堪能💛

やっぱり、歌舞伎ではキレイな着物を着た女形が観たい。そんな気持ちを満たしてくれる演目で、本当に嬉しく心躍る演目でした。

そう思ったのは、六月の東京歌舞伎座の夜の部の演目が、世話物の殺しが並んでおり、演技は悪いわけではないけど、観た後の気分が悪かったから。もちろん、演目観た時から、なんで?と思ってましたが、菊之助の子供、吉右衛門の孫が出るというので、つい、チケットをとってしまい・・・。観るんじゃなかったという、プチ怒りがずっと残っていました。

「廓三番叟」は、孝太郎が格の高い傾城で、黒の豪華な掛けを羽織っている。壱太郎は、新造ということで、若い遊女。明るい水色の着物に薄いピンク色の模様があり、気持ちいい。赤に白の細かい柄の帯で、きりりと引き締める。その配色がだけでも、見たかいあったと思えます。さらに、壱ちゃんの目線、しぐさ、足の運び、すべてが柔らかい。一つ一つの所作にきれいな流れがあり、目が離せません。顔もまた少しほっそりしたようで、女形の愛らしさ、たおやかさにあふれています。孝太郎の踊りもきっちりしていていい。舞台のサイズが小さいので、二人が引き立ちます。

ここに黄緑と抹茶を合わせたような着物の太鼓持ちで歌昇が加わります。3人がお座敷で踊っている風情で、襲名のお目出たい舞台の幕開けとして、最高の一幕でした。

松竹座「七月大歌舞伎」昼の部「車引」古典のキャラが楽しい

二幕目は、松王、梅王、桜丸の三つ子が登場する古典の「菅原伝授手習鑑」から「車引」です。松竹座ならではの、鴈治郎が梅王丸、扇雀が桜丸で、上方歌舞伎兄弟の競演です。

桜丸と梅王丸が最初、笠をかぶって出てきて、あれこれやりとりしている、そして、二人で笠を取る。桜丸は、色男系できれい。で、梅王丸は、強そうな男で、隈取をしっかりしているし、髪のサイドが、カールしたようなモコモコになっています。

別の役者です。左から、桜丸、松王丸、梅王丸

これも松竹座のサイズだからでしょうが、小柄で太目の鴈次郎がなんだかカワイイ。歌舞伎座キャラの「カブキッコ」のようです。たっぷりついた顔のまわりのお肉があるので、隈取もしっかり描けます。その外側に、不思議なパーマをあてたようなサイドの髪がある。松竹座で観る鴈次郎には、なんだか親しみを感じるようになってきており、見方が変わってきています。

そして、又五郎の松王丸が登場。これは敵になるわけなので、ピリッとした空気になるわけですが、梅王丸でカツラに目がいっていたので、こちらも髪型の不思議さに目が吸い付けられます。松王丸は、真横に鬢がはっているんですよね。その後ろに、髪はない。これを初めに考えた人は、楽しかっただろうなと。

今回は、歌舞伎の奥深いビジュアルの面白さを感じ、改めて感心しました。

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松竹座「七月大歌舞伎」昼の部「河内山」白鵬のいい味

ここまでで、本当に満足。松竹座は、上演機会が少ないからこそ、演者の都合でだけでなく「お客様が楽しめる」ことをよく考えているように思いました。

長めの休憩をはさみ、白鵬襲名の公演です。オレンジ色の高層の衣装が美しく、河内山の白鵬の、堂々とした登場です。幸四郎時代は、ミュージカルの「ラマンチャ」は楽しめましたが、歌舞伎では、ちょっとセリフ回しがもったいつけているような、馴染めないニュアンスを感じることがありました(個人の感想)。でも、今回の河内山は、自然な演技というか、いい味でした。そして、嘘がばれて開き直るときに、すっきりとあか抜けた感じがした。「大名ごときに、河内山をどうにかできると思っているのか!」という傲慢なところもいい!!今回の白鵬は、心から楽しめました。

松竹座「七月大歌舞伎」昼の部「勧進帳」進化する幸四郎

この演目は、歌舞伎座での襲名公演でも観ました。その時は、富樫は吉右衛門で、義経が新染五郎。力の入った注目の演目でしたが、舞台を観ているうちに「海老蔵の弁慶が観たい・・」という思いが湧き上がってきました。これは、仕方がないことですよね。

役者には、持って生まれたキャラがあり、スラリとしたカッコよさが持ち味の元染五郎は、どっしりした存在感のある元幸四郎とはキャラが違う。おじいさんの先代も観た事がありますが、風格があった。

弁慶という存在は、「地震、雷、火事、オヤジ」と例えられるような「コワサ」が必要だと思う。コワイ人だから、危機を切り抜ける時に、頼れる人にもなりえる。当然、その座の中で強そうな役者であることが必要となりますが、はっきり言って、富樫の吉右衛門のほうが、はるかに重厚で強そう。吉右衛門の立派な芝居に合わせている弁慶のような、吉右衛門が弁慶やったほうがいいのでは?というような・・。新幸四郎は、息をゴーーーッと吸っている感じがないから、声の押し出しが弱い=弁慶ぽくないのかなとか、いろいろ考えさせられながら観た一幕でした。

今回良かったのは、仁左衛門は富樫役者だということ。観るたびに、この水色の衣装がこんなに似合う人は、他にはいないと思う。セリフの声の使い方がすばらしく、富樫として芝居を引き締めても、弁慶を押しのけるような圧力というか、肉感がないので、幸四郎の弁慶が引き立つなと。

幸四郎は、きれいな小さな顔を黒く塗り、太すぎるまゆげを描き、唇を黒く塗って、なんだかもったいない感じですが、歌舞伎座の時よりも、セリフに広がりがあるというか、深みがでてきているのを感じました。ビジュアルには、なんか違和感を感じますが(個人の感想)、セリフや演技は、進化しているのを感じました。

また、孝太郎の義経もよかったです。ミーハー的には、新染五郎の方が、きれいでいいのでしょうが、やはり、演技は安定している。疑い晴れて、富樫たちと別れ、義経が本来の姿に戻り上座に移動するとき、その背中が微動だにしないのにハッと驚きました。品がいい。やはり、踊りで鍛えているのだと。孝太郎ももうちょっと若い時は、仁左衛門の相手役とかしていましたが、それも離れ、自分の美点を生かせる役をしているのは、好感が持てます。

松竹座「七月大歌舞伎」昼の部感想 まとめ

七月は毎年「関西・歌舞伎を愛する会」で上演しているので、上方ならではの役者の味が生かされているし、また松竹座の舞台の大きさも観やすい。今回は、襲名の二人の演目を引き立てる演目で、とても楽しめました。若手の壱太郎の成長も嬉しい。関西に住んでいたら、また観たい演目ばかりでした。

松竹座は、今月、1等が2万円、2等が1万円、3等は6千円です。さらに、当日の幕見券があります。3階の上手の一番後ろの10席で、1幕ごとの値段がついていて、割安です。電話で問い合わせると、残数を教えてくれます。親切ですね。土日は1等だけになっているようですが、他の日は2等、3等もあります。襲名の記念的な公演であり、いい演目なので、足を運ばれてみてはいかがでしょうか?

七月の大阪松竹座は、毎年「関西・歌舞伎を愛する会」ということで、上方歌舞伎の名家、松嶋屋が出演することに加え、最近は、同じ上方歌舞伎の坂田藤十郎の孫、中村壱太郎が良い役で出演するので、楽しみがプラスに。さらに、松本家の襲名披露もあります。
「番町皿屋敷」の壱太郎のお菊は、殿様が最後は井戸に捨てさせてしまうほど愛されるいじらしさがあり、恋するがゆえの弱さとがにじみ出ていました。事実が露見してからの哀れな姿、覚悟を決めてからの風情、「こういうのが観たかった!」というものでした。

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