尾上右近『研の會』感想 「封印切」の忠兵衛に挑戦、壱太郎が相手役

『研の會』は、尾上右近の自主公演で、今年で第四回です。国立小劇場という小さな規模の劇場で行われますが、右近は挑戦の場として、新たな役に挑んでいます。昨年の第三回には、松也が出ていたのもあり、また、歌舞伎観劇仲間のブームもあり、観に行きました。

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右近は女形の大役を演じていましたが、脇に出ている若手の魅力に気づいたり、舞台上だけでなく、終演後に役者がロビーに出てきてグッズ販売をやったりと、通常の公演にはない、エネルギーにあふれており、「なんだか楽しいな~」と。

尾上右近『研の會』感想 「封印切」忠兵衛への憧れ

今年の四回目は、上方歌舞伎の「封印切」と、上方の踊りである「二人椀久」を上演し、本来女形の右近が、すべて立役をやります。「ワンピース」で猿之助の代役の「ルフィ」(少年)をやり遂げた後だからかな、と思っていましたが、実はこの「封印切」の忠兵衛役は、右近のあこがれの役でした。

平成24年5月の大阪松竹座の上演で、右近は、『坂田藤十郎さんに憧れて25日間通っていたぐらい。舞台袖で泣きながら拝見していました。』(「封印切」は、悲劇ではあるけれど、多面性があり、)藤十郎のおじ様が演じる忠兵衛には、それが色濃く表現されていると感じました。』という熱い思いを、取材会で吐露しています。右近は、今20代半ばですから、10代後半でしょうか?多感な時ですよね。私も、観客として、若い時は、近松の心中物が好きでした。

恋をする男を演じるのも、立役で関西弁をしゃべるのも、歌舞伎におけるセリフ劇も初めてということで、自主公演だからこそ、そして、今乗っているからこそ、チャレンジできるのでしょう。いいですね、若手のこういう時って!

尾上右近『研の會』感想 壱太郎の梅川が楽しみ!

今回、どうしても観たかったのが、壱太郎が相手役の梅川に出るからです。今、若手女形の中で一番魅了されてるのが壱太郎。昨年から、女方の踊りがきちんとできていることと、さらになんともいえない愛らしさがある表現が気になり始め、観るたび、好きになっていきます。

壱太郎は、坂田藤十郎の孫であり、すでに、梅川も曽根崎心中のお初も演じて、高い評価を得ています。残念ながら、その頃は注目していなかったので、観ていませんでした。だから、今回は絶対観たかった。壱太郎の梅川ならば、右近もチャレンジしやすいでしょう。

尾上右近『研の會』感想 右近は演じる、壱太郎は梅川

幕開けは、梅川のいる大阪新町の廓「井筒屋」。壱太郎の梅川は、思ったとおりの愛らしさで、恋し、悩む風情が体中からあふれています。女将のおえん(吉弥)も店を上手にしきって、廓の感じが出ている。

右近の忠兵衛が出てくるのは、しばらくたってから。大きな拍手で登場しますが、その化粧を観たとたん、「アレッ?」と違和感がありました。

観ていた回数が多いのが、藤十郎であったり、鴈治郎であったり。いいとか悪いとかいう以前に、頬にぷっくり肉がついていて、丸顔寄りの顔。

それが右近は顔の幅の狭い、立体的な顔。現代では、こちらの方が、美形というくくりではありますが、眉をキリリと濃く描いていて、よけいにシャープに見える。さらに若いから引き締まっている。

上方の若旦那の風情にはぷっくりした頬があったほうがいいのだなと、初めて気づきました。文楽お人形も、頬の線は柔らかいですし。

忠兵衛は、大切なお金を預かっているから、帰ろうか、梅川に会いに行こうかと、花道から本舞台へ、行きつ戻りつします。また女将の采配で、裏の座敷に回って、梅川と会えることになり、その裏庭に入ってくるところから、梅川とじゃらじゃらするところとか、役者は違うのだけど、鴈郎のイメージが浮かんでくる。違うなーと。右近は、習ったことをきっちりやっているんのはわかりますが・・・。このあたりは、おかしみのあるところなので、難しいんだなと。

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敵役の八右衛門は坂東亀鶴で、上方出身。セリフのリズムがこの芝居にはまり、そこに右近が挑む。二人の言い合いの間、梅川は心配そうに見たり、不安げにうつむいたりしていて、「そこに梅川がいる」という感じです。

梅川に、さっきのお金は店の金、その封印を切ったからには、「この首は体についていない!」。驚く梅川に、「一緒に死んでくれ!」と言う。梅川も、「死なせてもらいます」と、なりますが、右近の忠兵衛には、「勝手なことして、そんなこと言われても困るし」という感じがいなめなかった・・。心中ものの難しいところです。

尾上右近『研の會』感想 終演後

右近は、上方歌舞伎の立役を演じるという、大きなチャレンジをやり遂げました。このことには、大きな拍手を送ります。十分経験のある周りの上方役者が良くて、いい公演となりました。

去年は、パンフレットをもらえましたが、今年は千円で販売していました。ただし、抽選券がついています。終演後、大急ぎで着替えた右近が出てきて、抽選がはじまりました。そのために残っている観客で、劇場のロビーは熱い!

プレゼントは、そこで販売しているものでしたが、直接受け取るのが嬉しいですよね。何人かが当たり、最後のナンバーは「77番」で、何か、縁起が良い感じがしました。

レトルトカレーを売り切るために、5個まとめてで、1つにでサインを入れるということに。頑張る右近。しばらくすると、壱太郎が出てきて、「二人椀久」の絵の入ったお扇子に、二人のサインを入れることになりました。先に買っていた人にまず入れて、次にこれから買う人。私は、すぐに買うことにしたので、一番前に並びました。3千円です。

いつか二人は、歌舞伎座で演じることになったら・・・

受け取る時に、壱太郎に「応援しています。」と言ったら、「ありがとうございます!」と返事をくれました。むふむふと嬉しい。

そうこうしているうちに、外は、雷が鳴り響き、大雨になる。右近が、「帰れないんじゃないん?」と驚きと心配の声を上げながらも、サインは延々と続きます。二人が頑張ってて、微笑ましい。来年の第5回目も楽しみにしています。

おまけ 真秀君が来てました!

席が一番後ろだったのですが、すぐ後ろは、視聴覚室のような所。海老蔵とかが文楽を観たりするときは、そこから観るようです。菊五郎夫妻、菊之助はロビーで見かけましたが、真秀君が、すぐ後ろに、身を乗りだしている。とっーーーーても、かわいかったです。興味あるのも嬉しい。中には、寺島しのぶもいたようですが、私には見えなかった残念です。

また、最後列のセンターブロックは、関係者席のようで、若手仲間の蔦之介や梅丸も来ていました。ワンピースの千秋楽は、3時くらいで終わっているから、梅丸は来られたのですね。小柄でしたが、お人形のようにかわいい顔立ちでした。小規模の公演の千秋楽だからこその、お楽しみでした。

二幕はみどころだらけです。巳之助のボン・クレーも目が離せないし、ニューカマーランドの賑やかさったらっ!!!ものすごい水量の水中の立ち回があり、大迫力!ルフィがサーフィンボードに乗って宙乗りで旅立っていく時に、ゆずの音楽で盛り上がります。
「番町皿屋敷」の壱太郎のお菊は、殿様が最後は井戸に捨てさせてしまうほど愛されるいじらしさがあり、恋するがゆえの弱さとがにじみ出ていました。事実が露見してからの哀れな姿、覚悟を決めてからの風情、「こういうのが観たかった!」というものでした。

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