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歌舞伎座の五月公演は、恒例の「團菊祭」。市川團十郎と尾上菊五郎ファミリーの公演なので、菊五郎が夜、海老蔵が昼公演で主演する華やかな公演になります。
昼の部の海老蔵主演公演、「雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)」は、単独でも上演される人気演目の「鳴神」や「毛抜」が、本来の通し狂言の中に盛りこまれ、前後のストーリーがわかる上演となり、面白さがアップ。さらに、この3演目とのつなぎの2役にも海老蔵が出演し、5役を早変わりで勤めます。
海老蔵主演五月歌舞伎座 美しく爽やかな口上姿
3階席に上がると、いつもと違う光景が。白いワイシャツ姿の男子ばかりが、3階A席という1列目から6列目を占めている。おそらく男子高校生、1年生かなと?
後ろから様子が見えるので、ちゃんと観てくれているか、気になります。こういう観劇会は演目が決まる前に日程が決まるのが普通でしょうが、海老蔵だし、エンターティメント性の高いこの演目でよかったねと。初めて観る演目が何かってとても大切なことですから。
幕が開くと、海老蔵が、口上姿の市川家の裃をつけて、一人でセンターに座っています。
口上の時のこの鬘は、市川家の一門が「口上」でつける先のとがった「鉞(まさかり)」という鬘で、すっきり、キリッとしています。頬がシュッとしてますます似合い、爽やか。海老蔵のこういう美しさにふれると、知ってはいてもあまりの美オーラに、気持ちが上がり、ずっと聞いていてもいいな~という気分になります。
5分程の口上ですが、これで物語がわかりやすくなるので、高校生の皆様にとってよかったなと、引率の先生のような、保護者のような気分になります。
海老蔵主演五月歌舞伎座 悪役とおとぼけ役でおもしろい
この物語では、海老蔵演じる帝位継承を狙う早雲王子という悪役と、安倍晴明の先祖の安倍清行という陰陽師が登場するところにおもしろさがあります。
海老蔵の悪役は、本当に腹黒そうで悪の色気と迫力があり、良く似合っていますが、この手の風情は他の演目でも観る事ができます。が、安倍清行は、めったに見られない役。
清行は公家の上品な姿で、一見、光源氏のような麗しき見た目なのですが、年齢は100才を越えており、すぐに疲れたとボヤき、でも女好きで「おんなのにおいがする~~」と、女に近寄っていきます。
おとぼけた味が何とも言えずおかしくて、笑わされてしまう。海老蔵の美しさがあるからこそのおもしろさです。ちょっとしか登場しないのですが、とても重要な役割を担ってもいます。
海老蔵主演五月歌舞伎座「毛抜」の笑い
「毛抜」は、単独で上演されることがあり、一度観た時、つまらない演目だなと。それは、お姫様の「髪の毛が逆立つ」病気が、悪者が天井に潜んで、磁石を使っていたからということで「な、わけないデショ」とバカバカしいと思ったことと、そこに至るまでが長く、眠くなっていたからです。
ですが、この通し狂言で海老蔵が粂寺弾正役を演じたのを観てから、ガラリと印象が変わりました。
歌舞伎なんですから、病気の原因がなんであったっていいんです。この演目は、粂寺弾正一人でお話が進む時間が長いので、この歌舞伎らしい衣装が似合い、一人で空間を満たしてくれる役者でないと、芝居の虚構にはいっていけないんだなと。
粂寺弾正は、かなり手が早いおじさんなんですね。かわいいお小姓がきたら、馬の乗り方を教えるとか言ってからだを密着させて、あやしげな動きをしますし、腰元が来たら、露骨にせまる。華のある海老蔵だから、これがとても笑えるのです。途中で、変な顔で固まったりして、これも笑えます。最終的には、お姫様の髪の逆立つ病気も原因も見事に解決、賊をしとめます。憎めないキャラで、笑いも多く、スカッと楽しめます。
海老蔵主演五月歌舞伎座「鳴神」の純情
「鳴神」は絶間姫(くものたえまひめ)という美女が出る華やかさがあり、最後にお上人様が姫にだまされて、怒りで荒れ狂う激しいシーンもありで、いろいろな役者が演じる人気演目で、私も好きな演目の1つです。
早雲王子に都から追放された鳴神上人が、竜神を閉じ込めて雨を降らさなくしているのを、朝廷から命じられた雲絶間姫が、上人を篭絡して竜神を解き放ち、雨を降らせるという物語です。だから、雲絶間姫は、美女でなくてはなりません。
今回は菊之助ですので、海老蔵とのバランスも良く、美しさは十分です。上人を篭絡するので、色っぽいしぐさや表情がありますが、あくまでも、気品を保っているので、魅力的です(役者によっては、下品で腹が立つことがある)。
鳴神上人は、高僧としての品位、知性を感じさせていますが、女性には免疫がありません。だから、姫との会話がおかしい。そのうちには、姫の仮病にまんまとひっかかり、胸元から手をいれ、肌に触れてしまいます。
そこからは、もうゴロゴロところがされて、初めてお酒を飲まされ、酔っぱらって眠りこけてしまいます。その隙に、姫に竜神を解き放たれ、ガラガラと雷が鳴り、大雨が降る。目を覚ました鳴神上人は、姫に欺かれたことを知り、髪が爆発し、隈取で形相も変わり、暴れて幕になります。この隈取の顔の海老蔵が、また、美しいのですね。
今まで、楽しい演目と思っていましたが、「これって高校1年生によかったのかな?」と、前の席の皆様が気になる。
女形とはいえ、女性の胸元に手を入れるシーンがあり、菊之助トロリとした表情が、なんとも色っぽかったですからね。結局、女の色香にだまされるわけで、身を亡ぼすことに。教育的に考えるとよかったのかな??といらぬ心配をしたりして。
あげくに、このあと、早雲王子の手下が「鳴神上人を切った」ということで、殺されてしまうのです。元はと言えば、朝廷が上人をだましたことで起きた事なのに、鳴神上人が、なんだか哀れになりました。
海老蔵主演五月歌舞伎座 まとめ
最後は、ついに悪事が表ざたになった早雲王子と、大勢の捕手(追っ手)との大立廻りになります。
この時の海老蔵はさすがの安定感!!迫力満点で、息をつかせません。最高の見せ場は、2階席まで届こうかという高さのはしごを、花道で、捕手達が先に半円の金具のついた長い棒で斜めにささえ、そこに捕手1名と海老蔵がタタッと登っていきます。てっぺんで、捕手がはしごの檀の中に足をくぐらせ、腰でささえて逆さまにぶら下がり、大拍手!!海老蔵も片手に刀を持って決めます。こういうのは、歌舞伎だからこそ、海老蔵だからこそ、です。
早雲の王子が、ひきずられるようにして、建物から落ちたあと、場面は暗くなり、三味線音楽と舞台美術で荘厳な空気に包まれます。しばらくすると、海老蔵扮する不動明王が降臨します。これが、どういう仕掛けなのか、浮いているのです。上からピアノ線で引っ張っているようにも見えず、映像を使っているのかなとも思いますが、今回もわかりませんでした。
ま、それはどうでもいいことであって、AM11~PM3時過ぎぐらいまでの演目ですが、楽しく見る事ができました。高校生の皆様はどうだったでしょうか?休憩時間は、人気の鯛焼「めでたい焼き」に並んでいましたね。いつもは混む女性トイレも空き空きでした。
さらに、外に出ると、驚くことに、夜の部にも学生の団体が!!見ると、宮城県の中学生の修学旅行のようで、今度は男女共学です。先生が、入り口前で、必死で名簿をチェックしながら、チケットを渡しています。
夜の部は、菊五郎の弁天小僧で、ちょっと年齢は高いけれど、歌舞伎の空気感はわかってもらえるかなー、TVにもちょこっと出ている二枚目の松也が、イナセナお兄さんで出るからから、大丈夫かなーと気になる。
こういう機会に、きっと、1人でも2人でも、歌舞伎の楽しさがわかってくれる生徒がいるはず。私も中学生の時にTVで見て、好きになってましたから。先生方の見識のおかげなのか、松竹の営業のたまものなのか?
今後も、若い世代に本物の歌舞伎に触れてもらえれば、イチ歌舞伎ファンとして、嬉しい限りです。