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客席に入ると、舞台の背面は鏡になっており、客席が写っています。これは初演の三代目猿之助の演出を踏襲したものだとのこと。以前、初演は観ているのですが、すっかり忘れていて、蜷川幸雄みたいだなと思っていました。舞台上には、オグリ判官と照手姫の衣装が飾ってあります。この新しい演出に「どんな舞台になるんだろう」というワクワク感が高まります。
「新版オグリ」の幕開けには美しさと驚きと
幕開きは、御簾で囲った優美な輿の行列で、斜めに舞台を横切り、桜の花びらが客席にも振ってきます。とてもキレイで、「はじめから力入っているな」と!!
そこに、6人の賊が現れ、輿を襲います。この行列は、照手姫が、豪族にお妾として嫁入りするためのものでした。男達は逃げますが、女官たちは輿の周りに残り、「姫が望まぬ嫁入りだから、どうぞ、このままさらって欲しい」とう、アッと驚く展開です。
この賊には、ロン毛をポニーテールに結んだ美剣士姿の笑也がおり、「エッ!」と驚きました。毎月歌舞伎を観ているので、細かい配役チェックはしておらず、なんとなく、笑也が照手姫かなと思っていました。新鮮だし、中性的で美しく、思わずオペラで追ってしまいます。
照手姫は新悟だったのですね。新悟と言えば、前回のスーパー歌舞伎の「ワンピース」のサリーちゃんで、光っていました。手足の長い長身を生かして、ピンクの衣装に、長い金髪がホントに良く似合っていました。
また、歌舞伎座6月三谷歌舞伎でのロシア人の娘役もピッタリ。「新悟だからこその役」で生かされていると思っていましたから、まさか照手姫という「健気なヒロイン」役をするとは。でも、キラキラな衣装や、華やかな演出のスーパー歌舞伎の舞台であれば、ヒロインも有りだなと。
オグリと照手姫の恋
姫をさらったのは、オグリ(猿之助)の指示でがなく、オグリ党の一人、猿弥が「二人は相思相愛だ」と言って仲間をだましたからです。当然ですが、猿弥の片思いです。
オグリは、照手姫を実家に送り返しに行きますが、実家では、オグリを暴れ馬を使って、殺そうとします。
歌舞伎の舞台の馬は、普通二人の人間が前脚、後ろ脚になっていますが、この馬が、金属のように見える素材で、前脚も後ろ脚も、本物のように作られ、関節がしなやかに動きます。
中に二人の人が入り、激しく動くことで、まるで本物の馬があばれまわっているように見えます。物語を忘れて、演出や裏方さんの頑張りに見惚れます。
照手姫が、オグリに恋を告白し、オグリも、姫の心意気が気に入ったみたいなことで、好きになりますが、この展開が唐突というか、特に、オグリが照手姫を好きになったタイミングがよくわからないというか。馬の演出等、他が濃すぎて、なんだか簡単に好きになるのねと。
でも、オグリ党の仲間達と祝っているうちに、矢が飛んできて照手姫以外は、刺されて死にます。オグリ党のみんなを観察して、「誰だろう」とか観察しているのに、「エッーー!もう、死んじゃうの!」という驚き。肩透かしを食らった感じでした。
でも、考えれば、オグリは、「地獄に落ちて、それから蘇って車に乗って善意の人達にひっぱられて、という話だった」というのを思い出せば、一幕でさっさと事を進めまければいけないんでしょうけどね。そんなら、オグリ党に、あんなにキャラ付けしなくてよかったのにと。
照手姫のその後と、猿之助オグリの地獄の戦い
照手姫の実家の怒りはすさまじく、照手姫も水に沈めてしまえ、となりますが、その美しさから、周りの人に助けられ、川に流されていきます。そして、人買いに売られ、遊女になるところを、下働きにさせてもらいます。照手は名前を変え、「人に助けられた命だから大切にしよう」と、明るさを失わず健気に働きます。
オグリと仲間たちは、地獄に落ちています。閻魔様は、浅野和幸でスーパー歌舞伎がもう3回目。いい味を出し、笑いをとっています。その妻が、笑三郎。華やかな衣装に身を包み、浅野ともお似合いです。地獄が、真っ白というのが、今回の新演出で、二人とも白いきらびやかな衣装を着ています。
確かに地獄と言えば、暗いか、火が燃えているかというのが一般的ですよね。
この戦いで、オグリ党の見せ場があります。特に武術のすぐれた役の中村玉太郎が、切れ味の良い剣サバキで目立っていました。また、芝翫の次男、中村福助の役も、乱暴者の感じがキャラに似合い、動きもよかった。笑也は、髪をなびかせ美しいけれども、立ち回りとか走るところとか、なんだか弱っちくて、それが、何とも言えずかわいくて萌えでした。
派手な水を使った立ち回りがあり、「もうピークかッ!」という勢いで、地獄の戦いは進みます。水の演出も、下から吹き上げたりで、今までみたことのない派手さです。
この戦いで、オグリだけ閻魔によって、地上に返されることになります。オグリ党は、もう出ないわけで、笑也の美剣士も見られません。
ガックリ。
三幕目の、地味な展開を耐える
オグリは餓鬼病(ガキヤミ)となって、外見も変わり果て、自分で歩くこともできない弱者になります。幕開けの華やかさはどこに。普通は、このあたりで盛りあがるでしょ、というところが、辛抱の時間。だから観劇疲れを感じます。
でも、右近ちゃんの出演シーンには泣かされました。5分ほどのシーンでしたが、かわいいだけでなく、声がよくて、セリフが胸にしみます。
そして、やっと隼人の遊行上人が登場。坊主頭だと、顔の美しさが引き立つのは、海老蔵と同じですね。衣装の袈裟も、ジーンズのような素材のハギ合わせで、素敵です。
でもね、オグリを導く上人としては、セリフに説得力がありません。というか猿之助オグリが説得力ありすぎますからね。どうしても弱く聞こえます。でも、美しいことは、何よりです。
熊野までたどりついたオグリは、薬師如来によって、健康な姿を取り戻します。そして、隼人上人と一緒に、馬の宙乗りとなります。
これは、見ているのは怖かったです。ちょっとでもバランスくずしたらどうなるんだろう、と。でも、客席がワーッと湧き上がり大拍手となりました。私は3階席なので、最後までよく見え、もちろん、盛り上がりました。
とにかく、ここからは華やかなシーンが復活します。そして、休憩時間に、猿之助が芝居調で何度も宣伝していた(とてもおもしろい)スーパーリストバンドをキラキラさせながらの踊りとなります。客席も一緒に手を振ったり、あげたりする場があります。後半耐えてるので、ここで発散できます。
まとめ
ネットの歌舞伎美人によると、
今回の公演は、舞台全体がスペクタクルにあふれています。
特に目を見張るのは、舞台上に置かれた大きなLEDパネルと鏡。
パネルに映し出される映像や、劇場全体を使ったプロジェクションマッピング、そして鏡に客席が映る演出もあり、舞台と客席が一体となる感覚が味わえます。
衣裳には、着物をベースにストリートファッションがとり入れられ、現代的で豪華絢爛。
さらに、馬に乗った左右同時の両宙乗りという、新橋演舞場史上初の試みもお楽しみいただけます。
と「演出がどんなにすごいか」が、書かれています。確かにそうでした。「すごい」ことがたくさんありました。
でもね、途中から、なんか味気なくなってきて・・・。刺激慣れするというか。小栗判官は、桃太郎ほど知っている物語ではないしので、なんだか、物語の展開に違和感があって。刺激が多すぎて、ストーリーに乗る脳の余白がなかったとでもいうのでしょうか?
小栗と照手の恋の成り行きにもですが、猿之助のオグリは、行き場のなかった仲間を助け、英雄感たっぷり、説得力たっぷりなのに、悪い奴として、修行させられるのかがわからない、というのが一番でしょうか?
一面の薔薇の花にも違和感がありました。衣装なのか猿之助なのか、歌舞伎だからなのか、薔薇というのがどうも・・・。薔薇は、宝塚なら似合うけど(宝塚ファンです)。
途中で閻魔が助けたり、いじめたりするし。これは、場面としては、笑いをとっていたけれども、「なんでそうするのか」がわからない。照手姫を助けた良いおじいさんが殺されてしまうし。
途中、「これを来月、隼人主演で観るのか・・」と、ちょっと失敗したように思いましたが、終わってからは、隼人主演だと、かえっていいかも、と思い直しました。すでに隼人版を観た友人も言っていたし。
隼人は何と言ってもカッコイイし、実際に若いから、「修行しないといけないところもある」ということに違和感がないだろう。それを餓鬼病で学び、成長するのだと。新悟との並びもいい気がする。それに、何と言っても、猿之助が上人をやったら、絶大な説得力でしょう。
なんだか不満の残った観劇でしたが、翌朝、目が覚めたら、とってもスッキリしていました。変化の多い演出で、脳が良い刺激を受けていたようです。そう思うと「スーパー歌舞伎」って、すごいものですね。こんなに書く事あるし。来月の隼人主演が楽しみになりました。