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八月納涼歌舞伎「新版雪之丞変化」感想 玉三郎・七之助・中車

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今年の納涼歌舞伎には、玉三郎が出演ということを知った時は、「ホントーッ!!」と大喜び。今まで出演したことありませんから。越路吹雪のリサイタルが続いているし、10月まで歌舞伎座出演はないものとガックリしてました。だから、ホントに嬉しい💛

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さらに、雪之丞役という女形の役だから、「美しいことには間違いない」「踊りもきっとある」、ということで、初日あけての週末の11日と、22日、さらに千秋楽の3回チケットをとりました。すべて3階席ですが、回数観たいのです。

八月納涼歌舞伎 玉三郎が東銀座駅に

東銀座の駅を降りると、納涼歌舞伎のポスターが、丸い柱にはりつけられています。

夜の闇に雪が降っているようなこの着物と、気持ちを抑えているようなこの表情が、なんともしっとりと美しい💛

私の知らない玉様で、期待が高まります。

後ろの弥次喜多の庶民的&楽しそうなコンビとの比較で、ますます、玉三郎の静かな美しさが引き立ちます。

「新版雪之丞変化」では映像を駆使

玉三郎のインタビューより

通常の手法で劇化すると、3時間やっても間に合わないので、『新版 雪之丞変化』では映像を用いて物語をスピーディーに展開させ、『芸術と敵討ちを雪之丞がどう受け止めるかという話に凝縮し、雪之丞の芸術に対する心情に絞って見せます。

ということで、「どんな舞台になるのかな?」と思っていたら、幕開けから、映画のように演目と「坂東玉三郎」「中村七之助」「市川中車」と舞台前面に映し出されます。新しい!!

舞台装置はほとんどなく、暗い空間の中で物語は進みます。

中車が五役もやっていて物語が展開するのですが、それを舞台に出てきた小型のスクリーンに映し出すことで、進行を早めています。

玉三郎の雪之丞と七之助のからみ

七之助は、今回新たに作った役で、「秋空星三郎」という雪之丞の先輩役者です。

お風呂上りの帰り道に、星三郎の「次はどんな役をやりたい?」と言う問いかけから、芝居談議がはじまります。

これが、まず大きな見どころです。

先輩役者の星三郎に対して、恥ずかしそうに「金閣寺の雪姫」という雪之丞のなんとかわいいことか!!

実生活では、玉三郎が大先輩であり、七之助を指導しているわけですが、全くそういうことを感じさせません。これは、演技でもあるでしょうが、リアルの玉三郎がもつかわいらしさ、愛嬌があってのことだなと思います。

雪之丞は順々に、やりたい演目を挙げます。それに合わせて、暗い舞台の背景全体に、玉三郎が演じた舞台がサッと映し出されます。

どれも、とても美しい!!

さらに、浴衣を着た二人が、芝居のからみをします。

籠鶴瓶の八つ橋が、微笑みを返すところなど、オペラでガン見しました。

また、七之助の星三郎としてのセリフから、なぜかフッと勘三郎が思い出される時があり、「アラッ?」と思ったり、「なぜだろう」と思ったり。玉三郎とからんでいるという思いもあり、芝居の内容とは別に、小さな感動に包まれました。

勘九郎は立役なので、勘三郎と同じ役をやることが多いし、また、声質は似ていると感じていますが、勘九郎と勘三郎が「似ている」と思うことはなく、「似せている」と感じて、胸が苦しくなることのほうが多くて・・。

でも、七之助は、外見も声も違う。それなのに勘三郎を感じるのは、なんなのか?

考えて観れば、家族内で、自分達では似ていないと思っていても、友人からは、話し方とか似ていると言われることがあります。そう思えば当たり前のことですよね、父の舞台を、身近でずっと観てきたのですから。

女形が伸びるのは、いい立役に出会った時

雪之丞が江戸の中村座から声がかかったという時に、星三郎は舞台で倒れます。体を悪くしているのを隠していたのですね。

そして、旅館に運ばれ苦しい息の中、雪之丞に「役者はまず一番をめざさないといけない」と言います。そして、「いい相手役(立役)に巡りあえば、ぐーんと女形は伸びる」「でも、その時は、立役が一番で、自分は二番でいいんだよ」と言います。

胸にジーンとくるセリフです。

これを聞いて、歌舞伎ファン、玉三郎ファンなら、仁左衛門、イエ、「孝夫さん」を浮かべない人はまずいないでしょう。孝玉コンビで、どれだけ楽しませてもらったことか。本当にお似合いで、絵になる二人でした。

ついこないだの、忠臣蔵の七段目の兄妹、平右衛門とお軽の切りかかられてから始まるジャラジャラ。観ている間中、嬉しくて。

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一幕で七之助の星三郎が亡くなってしまったのは、残念でしたが、役者の本当の声を、セリフとなって聞くことができ、舞台へ心がグンと近づきました。

玉三郎の道成寺が観られた

二幕目は、江戸の舞台が始まるところからなので、「娘道成寺」の花子の姿で、玉三郎が登場します。

これが!!

メチャかわいいのです!!!

驚きました!!!!!!

雪之丞では、青みがかった色の眉を描き、ブルーや白のクールな色合いの衣装を着ているのが、花子では、華やかな赤い衣装に簪。眉を黒でひいていて、若い女子になっていました。この変化にも驚きました。

そして、最初の金の烏帽子を着けたところを、踊ります。

最近は、二人や五人の道成寺で、玉三郎は、「もう踊らなくなるんだな」と思っている(寂しいけど、仕方ない)ので、「踊っていただけた!また、観る事ができた!」という嬉しさ!!

そして、なんとも言えない美しさ。腕がふわりと出ていて、その先に扇が吸いついて、ヒラヒラフワフワと宙に浮いているような・・・。なだらかに添う着物のように、扇も、またなだらかなのです。この美しさがたまりません。

雪之丞がはけてからは、後半の鐘に恨みをぶつけるところの映像に変わりました。これも素敵でした。

道成寺の舞台に上がる前に、親代わりであり、先輩役者の菊之丞(中車)が、雪之丞の敵が桟敷に来ていることを告げます。

雪之丞:「この恨みを鐘に向けて踊ります。」

菊之丞:「自分の恨みをそのままぶつけたら、お客様は息がつまる。」「役者は、嬉しくなくても、嬉しく見えなくてはいけない。悲しくなくても、悲しく見えなくてはいけない。」

こんな内容のやり取りがあります。セリフであっても、役者というものの生の声を聞けて、観客である自分が、もっと役者に近づいた存在になったように感じました。

「新版雪之丞変化」の玉三郎

雪之丞は、中車演じる闇太郎と組んで、敵を追い仇討を成し遂げます。この舞台では、そこにあまり時間をかけません。それでいいと思います。そういう出来事よりも、雪之丞を通して、玉三郎の芸術に対する心情を聞けたのですから。

最後は、雪之丞の元禄花見踊りの華やかなシーンとなります。長唄の演奏者も、通常の踊りの公演のように舞台上に乗り、生演奏の醍醐味を味わえます。

途中、雪之丞は引っ込み、立役、女形とも、見せ場のある踊りとなります。

最後に雪之丞の玉三郎が、黒字にオレンジ色を使った衣装で登場、華やかな幕切れとなります。

芝居の最後に、雪之丞の心情としてこの芸の華やかさを観せる。エンターティメントとしては、こういう演出があって欲しいですね。

まとめ

今回は、玉三郎、七之助、中車に、星三郎の弟子の鈴虫の4人という小人数での芝居。舞台装置もほとんどなく、映像の中の役者と芝居をする。こういう新しい試みをする玉三郎を、心から尊敬します。また、鈴虫には、ダブルキャストで新人の尾上音之助と坂東やゑ六を抜擢している。こういうところも大好きです。

私には、いろんな感動や楽しみがあった今回の演目ですが、日経新聞8月20日の夕刊の八月納涼歌舞伎の評では、「意図しただけの深みに達していない。」(演劇評論家 上村以和於)とだけありました。

「意図した深み」とは、「雪之丞の芸術に対する心情に絞って」ということでしょうか?いいところがたくさんありましたが、「たったこれだけ?」と。

人の感じ方は、それぞれですね。

昨日の観劇では、平日ですが幕見に立ち見がずらりと出ていました。

七之助の星三郎との芸談を聞くだけ、暗い舞台で、一人、道成寺を踊る玉三郎を観るだけでも、私には価値があります。

6時半から8時45分で、間に20分の休憩もあり、そう長くはありません。「観たいな、でも3階はないし」と思っている方は、幕見をおすすめします。

10月歌舞伎座は、 勘三郎の七回忌追善公演 。亡くなってもう7年も経つのかと言う感慨と、でも、 あの時のショック、悲しさは、消えることないという気持ちが、同時に湧き上がります。遺影となる写真を見ると、まだ胸がうずきます。
昨年の10月に、長唄の名曲である「秋の色草」の舞踏劇で、玉三郎と梅枝、児太郎が共演しました。途中、三味線とお琴で演奏する部分があり、ここを若手二人が琴の生演奏をしました。玉三郎は、きっと将来の「阿古屋」の事を考えているんだと思っていました。
10月の歌舞伎座公演は、勘三郎七回忌追善公演で、七之助が「助六」の揚巻に抜擢されました。相手役の助六には仁左衛門、七之助の指導役としては玉三郎が就きます。勘三郎と共にすばらしい舞台を生み出してきた二人が、七之助の初役に協力します。
「長三郎は、できるの?」 これが、八月納涼歌舞伎で「伽羅先代萩」が上演されるのを知った時に頭に浮かんだこと。 昨年11月の中村座公演の稽古の様子では、子役の大役を演じる長三郎は、ジッと座っていられなくて、教えるお弟子さんが本当にお気の毒。

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