錦秋名古屋 顔見世歌舞伎観劇(3)昼の部の感想

名古屋で1泊後、今日は昼の部観劇です。雨もやみ、土曜日ということで、着物姿の女性たちもチラホラ見受けられ、劇場ロビーは、昨日よりにぎわっていました。

一幕目 恋女房染分綱   (こいにょうぼうそめわけたづな)   重の井

大名の姫の乳人(めのと)になっている重の井は、訳あって離れ離れになっている子供、幼い馬子(馬の世話をする係)の三吉を、それとは知らず、姫の機嫌をとるために呼び入れる。重の井は、二人になった時に、三吉から「かか様」と抱きつかれ、わが子と知る。しかし、姫への忠義と母の情愛の板挟みになり、苦しむ。最後は悲しみをこらえ親子は別れる。

三吉と母、重の井とのやりとりが見せ場で、三吉は大きな役です。これを、地方公演で、チラシには名もでていない子役が見事に演じていることに感心しました。また、魁春の重の井も、品格と母の情がにじみ出ており、迷う心が伝わってきました。

二幕目 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき)

旗本のお殿様と身分を超えた恋仲になっている腰元のお菊が、お殿様を信じきることができず、その心を試すために家宝のお皿をわざと割る。一度は許されたものの、粗相で割ったのではないと知ったお殿様は、お菊を成敗する。純愛ゆえに起こった悲劇。


「壱太郎(かずたろう)のお菊を観たい!」と思った期待の演目です。

お屋敷での登場シーンから、腰元としての仕事中にも、お殿様の縁談の噂を聞いて不安でたまらない、心ここにあらず、という風情がなんともいじらしくて、かわいい。

お菊の迷う心に「立場が弱い腰元なんだから仕方ないよね」と共感できる。家宝のお皿を割ってまで、お殿様の心を試そうとするのは、「身分違いの恋のストレスで、軽度のうつになっていたのだろう。その弱いところが、女としての魅力で、愛されたのだろうけれどね。そこまで追い詰められているのに、お殿様には言えないよね。」

お殿様にお皿を割ったことが許されたことで、お菊は不安から解放されます。その後、人払いをして二人りだけになり、お殿様に愛されている、ふんわり愛らしいお菊になります。そして、お殿様がお菊と本気で結婚しようと思っていることがわかります。

この時、お菊はどんな気持ちだったのでしょう?嬉しかったでしょうが、後悔の気持ちも芽生ていたのでは?その後すぐに、わざと割ったことがわかり、天国から地獄へとなるわけです。

問い詰められ、最初はおろおろし、泣いていたお菊も、だんだんとお殿様に本当に愛されていことがわかり、成敗を受け入れます。

壱太郎のお菊は、お殿様が最後は井戸に捨てさせてしまうほど、愛されるいじらしさがあり、恋するがゆえの弱さとがにじみ出ていました。

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事実が露見してからの哀れな姿、覚悟を決めてからの風情、「こういうのが観たかった!」というものでした。

三幕目 蜘蛛糸梓弦
(くものいとあずさのゆみはり)

愛之助が五役の早変わりをする舞踏劇。

1.美少年の小姓

2.軽い感じの太鼓持

3.座頭

4.怪しく美しい傾城・薄雲太夫 5.蜘蛛の精

下座は長唄と常磐津。

愛之助は元は女形だったのを、玉三郎に言われて立役になったというのを聞いたことがあります。初めて傾城姿を観ましたが、とても綺麗でした。歌舞伎を観たという満足感には、こういう華やかさが欠かせないなと思いました。

錦秋名古屋 顔見世歌舞伎公演 昼夜とも大満足


昼の部の私たちの3等席の左前は、制服姿の20人ほどの高校生(のよう)でした。引率の先生もいました。彼らがどう感じているかが気になり、チラチラ見ました。1名ぐらい、眠気があるように見える子もいましたが、皆、興味を持ち続けて最後まで観劇したようで、なんだかホッとしました。年に1回の公演に、若い人達が観に来てくれていると、歌舞伎ファンとしてはとても嬉しいです。

今回、昼夜を通して、初心者が観てもわかりやすい演目だったと思います。武家物のかっこいい立役が出てくる重い演目がなく、「愛之助はかっこいい二枚目をやらなくていいのかな?」と心配になったほどです。特に夜の部の一幕目は、女に負かされる役ですから。喜劇とはいえ、見ようによっては、クスッと笑いながらも、情けない男だなと。壱太郎は、強くてかわいい、かっこいい女でしたが・・・

とにかく、今回、東京から遠征して昼夜とも観てよかったです。若い世代の役者が育っていくのを見守りたいと思いました。

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