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九月の歌舞伎座は秀山祭。初世中村吉右衛門の芸の精神を伝える演目が並びます。夜の部は、「寺子屋」から始まります。
「寺子屋」は、主君のために子供を犠牲にする演目なので、あんまり続くとイヤになりますが、役者によって味わいが違い、人気演目になるのも納得です。
また、主君菅原道真の息子、菅秀才は子役にとって重要な役であり、今回、丑之助君が演じるのが、楽しみ。先日の襲名公演では、牛若丸を立派に演じ、特に後半になっての、成長ぶりがすばらしく、感動の渦を巻き起こしていましたから。
吉右衛門の松王丸は、今更いうまでもないでしょう。息子を犠牲にした悲しみが、ひしひしと伝わり、味わい深いものでした。今回の寺子屋は、とても新鮮でよかったので、他の役について書きます。
観劇日 9月5日
「寺子屋」の生徒、鷹之資の涎くりがかわいい!
舞台は、元武士の武部源蔵が営む、寺子屋から。机についているのは、子役達です。奥には丑之助の官秀才が、殿様の身なりで、手習をしています。おかっぱの鬘が、微妙・・・。でも、集中して手習しているのがわかります。
子供たちの中に、一人大きななりをしたのが「涎くり」。いわゆる「あほう」役です。これが、鷹之資なのですが、みかけからもおかしみがあるし、動きもはずむようで、かわいいのです。セリフにも愛嬌があり、しっかり笑いをとっていました。この後悲しい物語になる分、鷹之資が、父をおぶって花道を引っ込むまで、明るい笑いがおきて、とてもよかったです。踊りだけでなく、演技のセンスもなかなかなのものです。これからの楽しみが、増えました。
寺子屋の主人源蔵の幸四郎が、カッコイイ
源蔵は、菅秀才をかくまっていることが敵方にバレて、首を打ち取れと言われた後の帰り道ということで、花道から登場します。1階席の後方だったので、出たところから見えます。濃い茶色の羽織に茶系の着物という渋いいでたちで、悩める源蔵が幸四郎に、思いのほか良く似合っています。
八月の「東海道の膝栗毛」の千秋楽を観ていたので、私としては、ついこないだまで、お笑いでドタバタやっていた姿が残っていて、あまりのギャップで、ちょっと混乱がありました、同じ人とは思えないというような・・。スラリとした外観が、「考えている」という風情にあっているのでしょうか。とにかく、登場でパッと心がつかまれました。
源蔵の妻戸浪の児太郎、シンプルな着物姿が映える
そして、夫の帰宅を迎える妻として、舞台奥から登場してきたのが、戸浪の児太郎。こちらも「美しい人が出てきた!」という登場感で、ハッとしました。赤紫色の着物に、黒い帯。児太郎も顔が小さくスラリとしているので、幸四郎との並びがとてもいい。「この二人は、バランスがいい、お似合いだな」という新たな発見が。
児太郎は、ある時から、だんだん目につくようになり、「きれいだな」と思うことが多くなりました。また、声に暖かみがあっていい。体幹がしっかりしていてい、腕がしなやかに動き、膝を曲げて裾を引きずって歩く姿も美しい。娘役のかわいい役よりも、こういう大人の役をすると、体全体の使い方が美しいから、舞台でだんだん目立ってきたんだなと気が付きます。
児太郎も「東海道膝栗毛」の千秋楽で、鬘をとばした三津五郎を見て、笑いが止まらず、次にセリフを言わないといけなかったので、途中で「ゴホン」と大きな咳をしたり、言い直したりで、おかしかった。その映像が頭をかすめましたが。
丑之助君の官秀才 どう成長するか
丑之助君には、1歳上の従妹で、寺島しのぶの息子まほろ(真秀)君がいます。また、話題が集まる子役としては、なんといっても海老蔵の息子勸玄(かんげん)君がいますね。まほろちゃんと勸玄(かんげん)君は、小学1年生で、丑之助君は幼稚園の大きい組でしょうか。たった1学年違いでも、子供の時のこの差は大きい。
まほろちゃんと比べると、おとなしい感じがありましたが、5月の襲名の時には堂々としていて、すっかり印象が変わりました。
今回は、じっと座っている時間が長い役ですが、そんな基本はクリアですね。ただ、セリフについては、今後の発展を期待したい。勸玄(かんげん)君は、七月公演の「外郎売」の長セリフを、歌舞伎調にしっかりと言っていて、驚きました。官秀才は、子役独特の高い声で一本調子で言うセリフですが、それでもうまい下手はある。
声はよく通っていたので、子役のセリフとして、その場をのど気持ちをよりよく伝えていくのか。どう変わっていくのでしょう。
菊之助の千代の気品ある美しさ
菊之助の奥様は、何とも言えない美しさで、大好きですが、今回も、黒い着物で花道から登場した時に、大人のいい香りが匂ってきそうでした。
菊之助のインタビュー記事より
岳父の女房役で緊張しておりますが、舞台には(息子の)丑之助もおりまして2倍の緊張でございます。その緊張に負けないように、自分の役になりきりたいと思います。
菊之助は、確かに、いろんな緊張がありますよね。
源蔵との腹の探り合いで、「小太郎や」「小太郎や」と呼ぶ時の姿、源蔵に斬りかかられた時に、抵抗する姿、すべてに気品がある。菊之助の女形は、道成寺の花子よりも、こういう役のほうが好きだな~。吉右衛門演ずる松王の妻というのも、合っていたし。この二人実際の義理の親子なわけですが、そういうの抜きでも、お似合いなのでは?
御園の前の福助と児太郎
最後に登場したのが、御園の前の福助でした。福助が昨年の秀山祭で復帰したのは知っていましたが、観劇したのは初めてでした。
部屋の奥から登場するように変えてはいましたが、歩いて登場するので、足が不自由なのがわかり、少し驚きました。まだまだ大変なんだなと。座る時は児太郎の戸浪が、福助に向かい合って両手をとり、役として自然に座るのを助けていました。その時の児太郎の後ろ姿が、なんとしなやかで美しかったことか。児太郎は、「一緒に舞台に出たい」という夢がかなっているのですね。
まとめ
久しぶりの「寺子屋」でしたが、吉右衛門は別格として、新鮮な配役でとても楽しめました。今回は二幕目の仁左衛門の弁慶のために1階の2等席をとっていたのですが、この「寺子屋」もとてもよくて、充実の観劇でした。良い席だと、感じることがたくさんあるのですね。
また、寺島しのぶとまほろちゃんも観劇していて、同じ列の席で、楽しそうなまほろちゃんのかわいい笑顔がチラチラと見えて、満たされました。まほろちゃんは来月歌舞伎座昼の部に出演ですね。それも楽しみにしています。