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八月納涼歌舞伎第三部の「新版雪之丞変化」は、過去に上演された仇討のストーリーが主になっているものではなく、歌舞伎役者の心情や、芸道観を描きだしているものです。今回、玉三郎が手がけた意味はそこにあり、とても新鮮で、ワクワクしたり、涙したり、うっとりしたり。大好きな公演でした。
「新版雪之丞変化」千秋楽の玉三郎と七之助の芝居話のアドリブは?
今回の芝居で、「このシーンを観るだけで通える」と思ったのが、一部の、安芸の宮島の舞台終演後、お風呂から帰る道すがら雪之丞(玉三郎)と星三郎(七之助)が芝居について語り合うシーンです。
二人の会話は、だいたいこんな感じです。私は、初日近くと後半、千秋楽と3回観ましたが、順番とか、違っていると思います。あくまでもニュアンスです。
星三郎:「次はどんな役をやりたい?」
雪之丞:「・・・」(うつむいて言いよどんでいる)
星:「こういうのは、次々出ないといけないよ」
雪:「金閣寺の雪姫。」
今までの2回観た時は、雪之丞は、自信なさそうに遠慮がちに言っていましたが、千秋楽では、「言っちゃえ!」と言う感じで、「雪姫!!」って言いきって「テヘッ」っていう感じでした。これも、また、かわいいんですね!
この時に、桜色のきれいな衣装を着た玉三郎の雪姫の映像が、上手の背景にサッと映ります。暗い舞台にとても効果的。
星三郎からが、桜姫は、結婚もしているし、絵も上手だし・・・、という気遣う点の話があります。
星:「次は?」
雪:「十種香の八重垣姫」
星:「あれは、奥庭までいけば華やかでいいけれど、御殿が難しいね。」
そして、雪之丞は、「桜姫東文章の桜姫」を挙げます。
この題名を聞いただけで、脳の奥にしまっていた、嬉しい記憶がよみがえるというか、「キャーッ!」と言いたくなるような、パッとした気分なりました。
ここで桜姫を挙げたのは、玉三郎の代表作というだけではありません。他に重要な役割りがありました。
「桜姫は、鶴屋南北の作だ」というところから、「四谷怪談」も南北の作品だねということになり、
雪:「そういえば、兄さん、来月やるんですよね。難しいですか?」
星之助「難しいなんてもんじゃないよ。」
雪之丞「確か、京都のミナミ・・とかいうところで」
今まで2回は、「京都で」としか言っていませんでしたが、千秋楽では、場所が具体的になりました。客席からは、笑いが起きます。
雪:「どこが難しいですか?」
星:「どこがって・・・、全部だよ!!」
雪:「でも、とてもうるさい人がついてるとか」
星:「明日から、すぐ稽古だよ。」「でもね、心強いよ。」
「明日から」というのは、千秋楽だからのセリフ。
七之助は、今月、一部から三部まで、ずっと出ていていて、さらに明日から稽古とは!休んでなんていられないんですね。
明日は、玉三郎は、国立劇場で「第二回 古典芸能を未来へ」に出演だから、参加しないのでしょう。この八月の歌舞伎座の楽屋で、時間をみつけて、きっと二人での稽古をしていたのでしょうね。
このシーンの最後に引っ込むところで、星三郎が「あなたには、教えないといけないことが、たっくさんあるから」と言い、その後ろに「はい」と言ってしずしず従う雪之丞。客席からは、笑い。たまらないですよね、この現実との逆転が。そして、この時、七之助がちゃんと先輩に見えてますから。
「新版雪之丞」千秋楽に星三郎の目に涙
一幕最後になって、舞台で倒れる星三郎。旅館の布団で雪之丞の腕に抱かれながら、苦しい息の中で、雪之丞に語りかけます。
「一番の女形になるには、いい相手方をみつけないといけないよ。」
「そうすると、女形の芸はグーンと伸びる。」
「時をつかまいといけないよ。」
この時に、星三郎の目からは、涙がツーッと流れます。観客席にもグスグスした音が起きます。私も思わず涙しました。
星之助の大切な相手役であった菊之丞(中車)に対して、「一番星になって見守っているから」といって、息絶えます。
七之助のセリフの端々に、勘三郎を感じるため、七之助の一番星となり、見守っているのは勘三郎なのだろうとも思い、いろいろと心が動くシーンでした。
七之助のセリフが勘三郎に似ていてビックリ
この発言を、休憩の時も、終演後もアチコチで聞きました。今回初めて観た時、私もハッと胸を突かれる思いでしたが、「やっぱり、皆そう思うんだ」と納得。
休憩時間では、舞台写真の販売所で、その話で盛り上がっている人の輪にはいって驚きを共有しました
そして、「顔も似てきた」と言っている人もいました。それは、私は違うと思います。勘三郎は、面長タレ目気味で、愛嬌のある顔。肉付きもいい感じ。七之助は、目じりの吊りあがったクールビューティで、骨っぽい。
でもね、違う役をやっているのに、「似ている」ということで、皆、驚きすぎて、客観的な判断力を無くしているのでしょう。同じ役をやって「似てきた」というのは、よくある話ですが、こういうのは、めったにないことですよね。
でも、これは、勘三郎をみんなが懐かしんでいるから。
思いもよらず、勘三郎「に触れた気がして、心が動いているんですよね。私も、波野久理子のを何かで見た時、「話し方が似ている!」と思い、衝撃でした。人の香りが残るというのは、こういうことなんですね。
まとめ
自分の思いも深くなり、また、きっと役者のみなさんも回数を重ねて深くなり、伝わるものの多かった千秋楽でした。玉三郎と七之助の共演を、また観たいです。中車もいい味出していました。