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植田景子先生の傑作であり、月組の大空祐飛の初期の代表作ともなった『THE LAST PARTY フィッツジェラルド最後の一日 』が、月城かなと主演で月組で再々演することに。かなと君なら、納得の演目です。
正統派の美形なのに、前作の本公演の『Baddy』では、ポッキー巡査で、かなり枠を超えていましたので、本来の彼女らしい役どころに戻って、期待がふくらみます。
月城主演『THE LAST PARTY 』 大空祐飛主演時を振り返る
2004年の初演の時、公演評もとても良く、東京での再演は、宙組、月組とも、2年後の2006年に決定!相手役のゼルダが、当時の宙組彩乃かなみと月組の紫城るいが入れ替わってということで、驚くとともに喜びました。
東京での大劇場以外の公演は、日本青年館で行われていましたが、はっきり言って劇場というよりは、舞台がある会場という感じで情緒はゼロ、というよりマイナス。2006年の再演時は、敢えてなのか、池袋の東京芸術劇場となり、舞台が芝居をする空間として美しいのが、まずよかった。
月組は、ほぼ毎公演1回は観ていましたが、祐飛さんをこんなにたっぷり観たのは初めてで、その手足の長さにまずビックリ!ウエストから足が出ているような、肘は腰まであるような。スラリとしているのは知っていましたが、ここまでとは!!
夢に向かって進む幸せな時は、最初の方だけ。時代の寵児となり、毎日の乱痴気騒ぎをしながらも、大衆に迎合して受け入れられたい自分と、本物の作品を書きたいという気持ちの矛盾にあせり、苦しむ。ゼルダを愛し抜きたいのに、それもぶつかりあって、苦しみに。そして、時代の変化で、小説の人気がなくなり、ゼルダは精神を壊してしまう。
お金に困っているのに、「ゼルダを安い病院に移し、スコッティを公立の学校に行かせるなんて、僕にはできない!」という弱さ。なんとも不器用な生き方しかできないフィッツジェラルドが、痛々しくて心がヒリヒリします。
後半、「がんばれ、がんばれ、小さな狐」と言って、自分を励まし、必死で書こうとする。本当の小説を書きたいという強い思いと、それがなかなできない苦しみ。芸術家として、物を生み出す苦悩が伝わってきて、最後の方には、涙がボロボロとこぼれてきました。
終演後までもジーンとしていて、宝塚でも他の舞台でも、こんな風な感動をしたことはない。植田景子先生の本もいいし、祐飛君のファンの支持が高い作品だというのもわかりました。再演を観られてよかった。
月城主演『THE LAST PARTY 』東京感想 名作を見る事ができ、感動
今回の東京公演は、建て替えられて、すっかりきれいになった青年館での上演。平日でどうにか取れた、2階の最後列センター席からの観劇です。
会場に入ると、まずセットがシックで素敵。ただの会場だった青年館が、きれいになってよかったなと。
かなと君フィッツジェラルドは、久しぶりの美しさを発揮。化粧もソフトな感じにしている。生演奏の音楽が流れる。本当にいい曲だなと思い、再々演してくれて、本当によかった、という気持ちが湧き上がります。
かなと君の歌を聞いていると、祐飛君は、こんなにうまくなかったよなーと思う。セリフの滑舌だって、ジェンヌとしての立ち位置だって、すべて祐飛君より上だなと。この芝居は、ほとんどフィッツジェラルドはでずっぱりなので、かなと君の美しさと芝居をじっく感じることができます。
ゼルダとの関係性
フィッツジェラルドの苦しみは、ゼルダとの関係にあります。「自分が手に入れられるなんて奇跡だ!」という程のゼルダ。アラバマ、ジョージアきっての美人で、このゼルダを見せびらかしたい、幸せにしたいという思いが、贅沢で派手な暮らしにつながり、お金のために、安っぽい短編を書くのに追われるはめになっているのですから。
ということで、美しく知的な月城フィッツジェラルドが、そこまであがめる存在でなくてはいけないのがゼルダ。それには、海野美月は、ちょっと物足りなかった。
祐飛君の時は、すでにゼルダのかなみちゃんはトップ娘役であり、立場的にも明らかに祐飛君より上。るいちゃんのようなスラリとした女優感はないですが、むっちりと女っぽく、そして、声がよく通り、なんと言っても歌がうまい。祐飛君があがめ、敬う条件がありました。
海野美月は、どうしても痩せっぽっちな感じがあり、多くの男の女神として存在するタイプとしては弱い。さらに、かなと君は、超二枚目ですから余計にね。「私はあなたの仕事に嫉妬する!あなたは私に嫉妬する!」というあたりのセリフの炸裂感も、なんだかものたりない(一時期DVDを繰り返しみていたので、染み付いている)。
かなと君は、物静かで知的という持ち味だし、そういうちゃんとした人が、成功した後の乱痴気騒ぎの派手な暮らしを、好んでやっているように思えない。
「二人の魂と魂がぶつかりあって苦しんでいる」というより、「フィッツジェラルドがまじめでいい人だから、学生時代の地元の女にはまってしまい、気の毒なことになっている」とでも言いましょうか?ここのぶつかり合いが弱く、だから、全体を通して、「ゼルダって、こんだけしか出ていなかったっけ?」と思いました。考えてみれば、ゼルダは、宝塚娘役にとっては、難しい役だったんですね。
フィッツジェラルドをとりまく優しい人達
フィッツジェラルドの才能を見つける編集者のマリンさん(悠真倫)が、暖かみがあふれて心に残りました。彼のことを思っているから、こんな生活をやめて書けと言い、何かと助けてくれる。最後に、フィッツジェラルドが頼ってきたのを「私にも生活があるから」と言って断る時、本当は助けてあげたいんだけど、という気持ちが伝わってきて、ウルッとしました。
秘書のローラの夏月都も、シーラの憧花さんも、本当にフィッツジェラルドが好きで、どうにかしてあげたいと思っている。この二人の暖かい心からも、フィッツジェラルドがどんなに素敵な人なのかが伝わってきます。
フィッツジェラルドがあがめるヘミングウェイは、暁千星。顔を黒く塗り、戦場から帰ってきた男で、大人っぽくなっていました。フィッツジェラルドへの忠告も、優しさゆえ。フィナーレでは、最初にセンターで踊り、これが一番素晴らしかったです。うまさが違う。久しぶりにいいダンスを観たという満足感が。
若手スター候補生の役、公園の学生は、風間柚乃。明るさと暖かみがあり、セリフもいい。フィッツジェラルドの心を揺り動かす役ができていました。
月城主演『THE LAST PARTY 』東京感想 まとめ
新たな布陣での再々演には、新たな発見がありましたし、名作はゆるぎないものだとも感じました。ピアノの生演奏もとてもよかった。フィッツジェラルドの登場時間が長いので、主演に似合う人がいないと、なかなか上演につながらないのでしょうが、今後も再演していって欲しい作品です。
今回はゼルダの難しさにも気づきましたし、なぜ、祐飛君がはまっていたのかもわかりました。祐飛君には、歌や滑舌など、技術の未熟さがあり、また、スラリとかっこいいんだけど、ルックスに幼さがあって、大人と子供が混ざったような、すべてアンバランスな持ち味が、自分の心をつかめず、イライラし、つまずいているフィッツジェラルドにはまっていたのだと思います。
月城さんのフィッツジェラルドは、美しさと悲しみを備えていましたが、「自分が見えないどうしようもなさ」、みたいなのがあれば、もっと良かったかなとも思います。
いい作品は宝物です。今回の上演は本当に嬉しいことで、月組のみなさんもがんばっていたし、植田景子先生にこれからもこのような作品を生み出してください、と思いました。