「文楽素浄瑠璃の会(東京)」を観賞 楽しい演目「楠昔噺」

文楽の定期公演は、「人形浄瑠璃文楽」で、太夫・三味線・人形が一体になって演じられます。通常、東京では2月、5月、9月、12月に、大阪では、その1ケ月前に催されています。期間は、だいたい2週間程度です。文楽は、ここ数年は毎公演ごとに観ているし、時には大阪まで行くこともあります。

「素浄瑠璃の会」は、浄瑠璃=義太夫節を音だけで楽しむ会で、1日だけの公演です。人形による芝居がないわけですから、十分キャリアのある方々のみで構成されています。

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文楽素浄瑠璃の会 知らなかった演目で楽しむ

いつもの文楽公演よりも年齢が高く、男性の割合が多かったです。そのためか、休憩時間はいたって静か、定期公演とは全く違うモードでした。

定期公演でも、私は、舞台ではなく、上手の床の太夫さんと三味線を見ることがよくあります。長唄の三味線を習っているので、目がいくのです。今回は、幕があくと、ドーーンと太夫さんと三味線弾きが真ん中にいる。それだけで嬉しくなります。

上演演目

一、奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)   袖萩祭文の段(そではぎさいもんのだん)
豊 竹 呂太夫
鶴 澤 清介

二、楠昔噺(くすのきむかしばなし) 碪拍子の段(きぬたびょうしのだん)
豊 竹 咲太夫
鶴 澤 燕 三

三、 傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)   新口村の段(にのくちむらのだん)
竹 本 千歳太夫
豊 澤 富   助

一と三はよく知っている演目で、特に三の新口村を、好きな千歳太夫さんと富助さんのコンビが演じるということで、前売を買いました。

二の楠昔噺は、全く知らなかったので、休憩時間にあわててパンフレットを読みました。

「『太平記』の世界を背景として、「爺は山へ柴刈りに、婆は川へ洗濯に」という昔噺の世界が重ねあわせられます。(中略)爺婆が仲良く連れ立って出かけ、爺の徳太夫は柴刈りに、婆の女房が洗濯する牧歌的情景から始まります。」と、なんだか楽しそう。

ただちょっと心配なのが、咲太夫さんが、痩せてきておられることです。9月の公演も楽しい場を語っておられましたが、声のボリュームに心配なところがあり、無理されているのではと思っていました。特に前の演目で、三味線のボリュームに太夫の声が負けてる感じがあり、素浄瑠璃だとこんなものなのかな?太夫さんの横に置いてあるマイクの調整不足かと思ったりしてました。

ところが!これが全くの杞憂でした!

「楠昔噺 碪拍子の段」 すぐにわくわく

燕三さんの柔らかい三味線から始まり、咲太夫さんが「むかしむかし、その昔祖父(じい)は山へ柴刈りに・・・」と語りだした時から、声はしっかり通るし、なんだか、わくわしてきて楽しい。「じい」という音がなんとも、味わいがあってかわいいのです。

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あぁ、これが素浄瑠璃というものか」と思いました。人形がなくても、情景が浮かぶ。

この爺と婆は再婚同士で、とても仲が良くて、咲太夫の語りで客席からも笑いが出たり、なごやかです。

爺が柴刈りに行く後ろ姿を見て「いとしや去年まであのような足元ではなかったのに、モウ一年一年弱りが見える」と婆が言えば、全体に年齢層が高い客層なのでクスッとした笑いも嫌味がない。

婆が洗濯するのに裾を引き上げて、踏み洗いで洗濯を続けようとすると、
爺が「ああ、これお婆、めったにまくり上ぎゃんな、どこぞの仙人が見たらば、昔を思い出して通を失うぞ」
婆は笑って、「そりゃ五十年も前の事。今は、渋紙のようなくすんだ太股になって、仙人が目を回して落ちるかも、どこ見せても気遣いない」というような答え。

楽しいんです。おもしろいんです。

このあと、お互いの連れ子を思いやるやりとりがあり、それを見ていて幸せな気持ちになります。

でも、この後、二人は夫婦げんかをしてしまうのです。通りがかりの人から、戦の噂を聞いたところ、お互いが支持する側が反対なのがわかったためです。それまで、ほのぼのとしている分、差がはげしくて!

「あれどんくさい、去んでくりょう」「おれも去る」「勝手にせい」「勝手にする」と負けず劣らず、腹立ち紛れの日の暮れ紛れ、爺は盥をいただけば、祖母は柴を背(せな)に負い、むしゃくしゃ腹の取り違え、わが家へこそは立ち帰る。

お互いの仕事道具を取り違えて、プンプンしながらも、結局家に帰るのです。

いやー、楽しかっった!燕三さんの三味線もよかった!こういう芝居っ気があって、おかしみがあるのは、咲太夫さんならではです。

この演目は、平成二年五月の文楽公演で咲太夫さんが演じ、東京ではそれ以来上演していないということです。もったいない!
でも、大阪では今年の四月公演で十二年ぶりに上演されたとのこと。残念!!こんな楽しいのだったら、人形のある舞台で観たかった。

大阪に行くときは、知ってる演目で好きな演者であったり、忠臣蔵通し公演、とかだったりするので、こういうのはどうしても見逃してしまう。

文楽の人間国宝の方たちも、ご高齢になってきています。大阪公演も瑠璃の会も、多少無理しても観ようと思いました。芸は財産ですから。

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