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昨年の七月、大阪公演でこの演目を観ました。蓑助のお辰が観たかったからなのです。最高でした!!黒の絣で、ベージュの博多帯、老女形(ふけおやま)という、眉が無いあだっぽい美人顔。「ドーシテ、他の方は、こんな風にナマメカシク遣ってくれないのだろ?」という、蓑助にしかない、肩や胸や首や目元や、手先や・・・言い出すときりのない動き。お辰って、こんな風に、色気満載のかっこいい女だよね、と思わせてくれる。だから、人間=歌舞伎では、もうこの演目は観たくないと。
文楽「夏祭浪花鑑」感想 鶴沢寛治 観ておいてよかった
この芝居の一番の見どころは「長町裏の団」です。去年の七月公演は、今は襲名して織太夫になった咲穂太夫が主演の団七を、敵役の悪い舅を津駒太夫が語りました。お三味線は、先日亡くなった鶴澤寛治。
団七と舅の掛け合いというか、言い合いで芝居がほとんど進むので、寛治さんは、最初に弾いた後、ペタンコに正座し、ちょっと首を傾げた感じで、三味線をかかえたオブジェのようになっていました。
咲穂太夫ののびのある二枚目声と、意地悪ばあさんのような、キンキンした角のある津駒太夫の声がぴったりとはまり、なんとも言えない緊迫があり、おもしろい。そこに、時々入る寛治さんのお三味線。素晴らしい公演でした。
ということで、今年の東京九月公演にこの演目が決まった時、また、あの感動に出会えると、すごく嬉しかった。観劇仲間にも、「すごくいいよ!」と暑苦しく語り。
寛治さんが亡くなったのを知ったのは、古典芸能観劇仲間のラインから。「今、ネットニュースで知りました。悲しい・・・」。「エッーーー!!」楽しみにしていたのに!!
ショックでした、残念でした。が、89歳であったということですし、今まで、よく舞台を務めておられたなと思うと、致し方ないことかなと。人間国宝の演者の方の年齢が上がり、「今、観ておかないと」という危機感を持っていますが、このたび、さらに、思いを強くしました。寛治さん、今までありがとうございました。ご冥福をお祈りします。
文楽「夏祭浪花鑑」感想 東京九月公演 蓑助のお辰
この演目で、主演の団七が、主筋だからといって守る殿様、磯之丞様は、ホントにおバカな若殿様です。歌舞伎での上演では省かれている、磯之丞様がなぜ団七達がかくまわなくてはいけなくなったかのストーリーが、テンポよくすすめられます。滑稽なシーンや道行のシーンなどもあり、「そういうことだったのね」と。
お辰の登場する「釣船三婦内の段」が、見どころなのは、変わりありません。昨年の公演と変わらず、蓑助がお辰を遣い、色っぽくてかっこいい。大満足でした。
今年、歌舞伎座でも、この演目の上演があり、子役につられてついうっかり観てしまい、お辰が出てきたところで、「違うな」と。歌舞伎役者が悪いのではなく、この役は、リアル人間でやるのが難しいということです。
女が顔に焼き鏝をあてるというのが、女形がやったとしても、同じ女としていたたまれないものがあり、それを、虚構の世界にまで引っ張れる役者は、そうはいない。
以前、海老蔵が、団七とお辰の二役を演じたことがありました。そのお辰は、ある意味、凄みのある美しさで、この世のものと思えないオーラがある。異様なものを観たということで、よかったですが。
文楽「夏祭浪花鑑」感想 東京九月公演 織太夫の段七
昨年と違ったのが、「長町裏の団」です。寛治さんが亡くなっているのですから、お三味線はぐっと若返り、鶴沢清志郎です。団七は、もちろん襲名した織太夫。舅義平次は、昨年とは違い、三輪太夫です。
緊張した面持ちの清志郎が、お三味線を弾き出すと、胸がじわじわと熱くなってきました。織太夫の堂々たる姿と、ぐっと若返ったお三味線。もう寛治さんはいないんだな、去年は観ていたのに、という何とも言えない気持ちが湧き上がり、しばらく、ウルウルしました。それと共に、若い清志郎の集中した表情に、ガンバレというエールを送りました。
団七の織太夫は、体全体を使って、のびのびとした二枚目声で表情一杯に語る。舞台のかっこいい段七も観たいけど、織太夫も観たい。忙しかったです。舅の三輪太夫は、落ち着いた武士のような声で、このどうしようもない舅の憎々しい感じは、昨年の津駒太夫のほうが出ていたなと。津駒太夫には、底意地の悪さと、華やかさがあったし、咲穂太夫(現織太夫)の二枚目声との対比がクリアになっていて、私としては好みでした。
文楽「夏祭浪花鑑」感想 まとめ
昨年観たこの演目は、本当に心に残る、過去に観た舞台のベスト3にはいる良い公演でした。文楽は、大阪と東京で各4回ずつしかやっていません。人間国宝の方の至芸を観るのも限られた時間です。そして、その中で、「この人、うまくなったな」という、若手が成長していくのも感じる時があります。「観ておけばよかった」ということがないよう、これからも情報をチェックし、できる限り、時間を取っていきたいと思います。